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∂"かってぼくは、人間的であることこそ、人のもちうる最高の目標だと考えていた。けれどもいまは、それはぼくを亡ぼすことを意味すると知っている。今日のぼくは、誇りをもって、おれは非人間的だと言うことができる"1934年発表の本書は発禁処分でも有名な、文学史上重要な"プロットなき"自伝的小説。
個人的には、大好きなパリ、セーヌ川左岸にある"ただで泊まれる本屋"シェイクスピア・アンド・カンパニー書店"を題材にした本(シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々)の女好きの登場人物が紹介していて印象的に残りつつも、積ん読状態であった本書。ようやく手にとりました。
さて、そんな本書は、日記や性愛小説で有名な女性、アナイス・ニンが絶賛しているだけあって?当時も非難囂々であったことも理解できるくらいに【起承転結的なプロットはなく、また性描写も赤裸々な】物語なき詩的小説なのですが。女性、特にフランス人女性に対する【差別的な発言こそ眉をひそめてしまう】ものの、淡々と描かれつつも、宿代や食事(とSEX)のために代筆ライターや語学の先生、風俗案内と【サバイバル能力に長け、文学や美術に詳しい】主人公の姿は逞しく、割と楽しく読み終えることができました。(とは言え、個人的には同じアンダーグラウンドな小説ならジャン・ジュネの『泥棒日記』の方が好みですが)特に散発的なエピソードが続く中では【ロシア人映画女優と友人との3人同居の話】がユーモアあって印象的。
一方で、女性遍歴が豊富なことでも有名な著者の【結婚が5回、されど8人目の妻?】日本人女性、ホキ徳田が今も現役最年長のジャズ・シンガーとして、六本木にヘンリー・ミラー・メモリアル・カフェ『北回帰線』を経営、昼はカレー、夜はバーをしながら、今なお演奏もしていることを本書キッカケで知って、近く訪れたいなとか思ったり(一緒に著者の水彩画展示もしてくれたら嬉しいのですが。。)

ロスト・ジェネレーションとビート・ジェネレーションをつなぐ作品に興味ある誰か、また現実逃避的な小説が好きな男性にもオススメ。